母さん方の多くはそうは考えていないようです。

勉強ができずにノイローゼ

つまり、自分は、対人関係が全くうまくいかない。だれとのかかわりも長続きしなかった。どこでの関係も、結局は壊れてしまった。でも、最後の頼みは、子どもとのかかわりであると思う、というのです。
大人とはうまくいかなくても、せめて子どもとはうまくいくだろうと思うので、の上の子どもを、どうか私に育てさせて下さい、と。
かわいそうな身
ほんとに、辛いことながら、これではやはりお断りするしかありませんでした子どもを育てるということは、育てる人の、人間関係のあり方を、知らず知らずのうちに、子どもに覚えさせることでもあるのですから、大人同士がうまくいかないようでは、子育てもなかな厳しいいい方をすれば、大人同士の人間関係は、まあだいたいうまくいくようになった。
子どもに選ばせます。

才能やひらめき

つまり、自分は、まあやっと、大人になった。だから、さあ、最後の、一番大切な人間関係といってもいい、子どもとの切実な関係を、今や自らひっかぶってみようかと。つまり子をひとり育ててみるか、と。
これこそ大人のしごとだという覚悟がやっぱり、子育てにはいるのですね。
間違いをおそれない子に育てるには
ところで、ちょっとした間違いをしたら、もうそれでおしまい、とあきらめる子どもが、この頃たくさんいますねえ。
それはつまり、間違いを犯さずにやれてきた子ども達だからです。
幼児期から、つまずかず、中学一、二年までは、あまり間違いを犯さずにやろうと思えばやれるのですね咎められず、すんなり育っていくというのは、親にとってもほんとにありがたいことですから、ああこれでよし、無事無難はありがたい、であとあとが、往々にして、大変なのですよと喜んでおれるわけで、でも、それはそれ間違いをおそれるというのは、今の時代はものが豊かになって、みんな学用品なんかも、一律に同じものを揃えるようになった。

 

先生は帽子の中を調べていた。

自分はたまたま家にこんなものがあったから、ちょっとみんなと違うが、これで済まそう、という風な、少々違ったもので間に合わすなんてことがなくなったので、別に気にしなくていいものまで、みんなが揃えるとなると、ほんとにみんな同じなのですね。だから、ちょっと違えば、もう致命的な間違いととらえてしまいますゲンヤくんは、ぼくもショー1、行くといった。書道のことです。
町角に、元学校の先生だった書道教授の看板があがっています。近所の幼い子ども達が、書道はお行儀の練習にもなるというので、親も喜んで行かせている。
写真館を渋谷で撮影しようと考えている
子供は親の後ろ姿を見ながら育つ

子どもは?

それのことなのでした行かせるにしても、まだ学校に行かない子に、学校の文房具の書道用品一式を買ってやることもなかろうと、お母さんは工夫して、家にあった硯や筆を揃え、丈夫な空き箱に、模様のきれいな紙を貼ってやり、布を底に敷いて、手頃な用具ができ上りましたすずりお母さんの手作りの書道用具を見て、書道の老女先生は「わー、いい工夫ね。ゲンちゃんだけの、世界にたったひとつの硯箱だから、大切にするのよ」
と、とてもほめてくれたので、ゲンヤくんも嬉しくて大満足だったというのです。
やがて、学校でも書道を習う年になりました。ゲンヤくんは文句なしにぼくは道具がちゃんとあるよ。あれ、持っていくよと主張して、幼いときから使っている自分ひとりの大切な硯箱をカバンに入れて元気よく出て行きました。

子供はあり余るほどの物質に囲まれて暮しています。

はじめての書道の時間、自分の机の上だけが、様子が違いますだって、みんなは、学校で一斉購入の硯や下敷きで、ゲンヤくんのような、家にあるもので揃えたというのは、ゲンヤくんただひとりだったのですからねはじめてみんな硯で墨をする。
新鮮な空気が教室に満ちています墨をすりながら、ゲンヤくんは、先生、ぼくの道具を見てどういうかな?とわくわくしていたのですね。幼い日、書道教授の老女先生は、いい工夫ね、といってくれた。
学校の先生ならどんな風にびっくりするかなと。
子どもたちの面倒

子供たちは目でも親の姿を見ています口に出す事柄


確かに、ゲンヤくんの硯は、お父さんが、本格的な書道でつかっていた値打ちもので、見る人が見れば、子どもがこんなものを、とびっくりしていいものではあったわけです。
みんなを見て廻って、後ろから先生がコツコツと足音を立ててやってきましたゲンヤくんの机の上の様子が違うのを見て、ひとこといってくれました。肩にちょっと手を置い
て、ああ、気にしなくてもいいんだよ。
違ってても

と。
え?
と、ゲンヤくんは、息をつめました。
いたわってくれるようなこと?気にしなくていいと、元気のない様子を励まされねばならぬとなの?と思った途端に、ゲンヤくんはすっかり元気がなくなってしまったのでした。
すっかり元気をなくして帰ると、どうしたの?
「だって、気にしなくていいって、お母さんが心配します先生、書道の道具のこと、いった。
なんだか、気になっちゃった。
みんなと同じのにする」
その母親が、この話を私にしてくれたとき、こういったのです。
「先生も、口にするひとことに気をつけて下さったらいいのに。